朝霧刀子の東亰ザナドゥ日誌 第１２話「Emergency」

あ

……よし、これでVitaTV起動完了っと。あ

みんなー、１５時３０分になったから東亰ザナドゥ始めるわよー！

あ

了解です！ 前回の部活は確か、コウさんのバイト先のカフェバーって店にあ

到着したところで下校時刻になったんでしたよね。

今回はそのつづきだから、いよいよ物語が動いていきそうですね。

あ

…そうですね。それではゲームを始めていきましょう。あ

まずはカフェバーの店主のハマさんと話して…と。これで話が進むはずです。

あ

コウさんのバイト内容は、力仕事に仕込みの手伝い…ですね。あ

私の場合、家の仕事はお父さんがやってくれますし、部室の整理整頓は

のぞみちゃんの超能力に頼りきりですから、そう聞くと新鮮に思っちゃいますね。

あ

ふふん、これからも私を頼ってくれていいんですよ。…あっ、だけど私も蘭さんもあ

力仕事、ばっちりできるじゃないですか。私は蘭さんの家で素振りを毎日３０回

してますし、それ以外の運動も蘭さんと一緒に何日もやってきましたし。

あ

…ああ。最近のぞみちゃん、木刀の振り方が妙に鋭いと思ったら、あ

そういうことだったんですね。…いえ、それは一旦置いとくとして…

…あれ？ あの人はゴロウ先生じゃないですか？

あ

本当だ、杜宮学園のゴロウ先生ね。今がちょうど夜だから、帰宅の途中であ

この店に寄ったってところかしら。…でも、このカフェバーって歓楽街にあるはず

なんだけど…教師がこんなところに来て大丈夫なのかしら。

あ

コウさんの深夜バイト共々、大丈夫じゃないからお互い見なかったで手打ちにするあようです。しかし…ゴロウ先生も力仕事ですか。ゴロウ先生は放課後、トワ先生と

一緒に、学園に新型端末…導力端末とやらを導入する仕事をしてましたよね。

あ

…導力端末。導力…ねぇ。確かサイフォンの通信機能に導力ネットワークとかいうあ

よくわからないものが使われてるって設定があったわよね。

これって、このゲームの世界で使われてるエネルギーのようなものなのかしら？

あ

…そういえば以前、私達からでは電波塔の形にしか見えないあのアクロスタワーがあ

実は「導力波塔」である…と、杜宮ジャーナルという雑誌に書かれていた記憶があります。…となると、導力は電力に代わる新しいエネルギーと見てよさそうですね。

あ

…………。あ

あ

……？ 蘭さん、どうかしましたか？あ

あ

…いえ、少し考え事をしてただけです。あ

それより、コウさんのバイトが終わった時間にちょうど、

リョウタさんからアクロスタワーでのライブ鑑賞の報告が――

あ

……轟音！？ …車の音！！ 緊急事態ですっ！あ

リョウタさんが交通事故に！ アクロスタワーからの帰り道で…！！

あ

っ…！ 想定してた中で最悪を引いてしまいましたか…！あ

しかし、あの神様アプリ…。当人に解釈を任せる形ではなく「交通事故」自体を

完全に当てるなんて。のぞみちゃんの超能力だってそこまで万能じゃないのに…

あ

…そうですね。私のプレコグニションは能動的に使うと自分自身にあ

著しい負担がかかりますから。負担なく未来を知ることのできる存在は…いいえ。

それよりも、先に日数経過が起きたことを優先しましょう。

あ

５月７日から５月８日…事故の翌日ってことになるわね。あ

だけど…リョウタ君、全知２週間の怪我のまま無理して登校するなんて。

そのリョウタ君が言うには、事故の原因はドライバーの運転ミスらしいけど…

あ

それでも、神様アプリの音声のいうとおり交通事故がおきたんです。あ

情報不足ゆえ、どちらにしても結論付けることはできませんが…

あのような故障紛いな画像も見せられて、偶然で済むとも思えません。

あ

…のぞみさん、刀子さん。情報収集なら良い案がありますよ。あ

この杜宮学園にいると噂されてる、神様アプリの開発者に会いにいくんです。

手がかりとしては細いですけど、もし当たれば、見返りは大きいですよ。

あ

…よしっ。あ

ちょうどその選択肢も出てきたところだし、美崎ちゃんの案を採用しましょう。

あとは、アプリの開発者が杜宮学園のどこに隠れてるかだけど…

あ

それを知るには、生徒への聞き込みが必要になりますね。あ

ちょうど放課後になって自由行動が始まったところですし…

トーコさん、今日中に急いで情報収集を終わらせてしまいましょう。

あ

了解！ そろそろ１６時半も近づいてきてるし、あ

ダッシュしながら最速でしらみつぶしに聞き込みをしていくわよ。

…まずは、頭の上にビックリ吹き出しのついたこの子に話しかけて…と。

あ

…ふーむ。神様アプリの開発者は１５歳の天才ハッカー…という噂ですか。あ

ハッカー…とは、今となっては珍しい言葉が出てきましたね。

コンピュータなんて、私の孤児院や蘭さんの家にだってないんですよ。

あ

都心でも業務用の高級品が大半ですからね、コンピュータは。あ

だけど…もし、その噂が本当なら、生徒の悩みに対して

まるでその生徒を知っているかのように的確に助言をした、あの時のお告げは…？

あ

…みんな、神様アプリの被害者を見つけたわよ。あ

料理の直前、アプリに火の元にご用心という「予言」が表示された直後に

コンロが誤作動を起こして、油を受けて火傷したんですって。

あ

…刀子さん、調査を急ぎましょう。あ

この問題、もう一刻の猶予もないかもしれませんよ…！

● 押して第１３話に進む

← 第１１話へ戻る